Fri
04
Mar
2011
この本に限らず世代宇宙船なるものが登場するSF小説には、理由もなくのめり込んでしまうのですが、この本に登場する宇宙船は厳密には世代宇宙船ではないです。本から読み取れる描写には、その機能を備えていますが、この船が遭遇するシチュエーションは、世代に渡って宇宙を旅するよりもっと過酷で凄まじいものです。実際にどう飛んでいるのかは途中から想像できなくなりましたが、相対性理論の浦島効果と同時性の(と自分でもよくは理解してないのですが。。。)パラドックスを最大限に活用したもの凄いSF小説だと思います。
いつも思うのですが、海外のSF小説はなぜこうも発想が豊かで、時間や空間の捉え方のスケールが違うのでしょうか。正直、日本で互角に対抗できる作家は小松左京ぐらいしか未だにいないのではないでしょうか。
小説の構成は停まることができなくなった恒星間宇宙船が、宇宙の終わり(と新しい宇宙の始まりまで)に至る時空を旅する中での船の中での人間模様が中心に描かれています。こういう設定だとリアル感が欠けて、設定だけで強引にすすむ感じがしますが、この本の凄いところは、背景に描かれた設定の丁寧さと人間描写の迫力に尽きると思います。この作者の著書は初めて読みましたが、SF小説としても発想が素晴らしいですが、普通の小説を書いても面白いものを書くのではと感じる筆力があります。
一つだけ注文を付けると、ラストの描写があまりにも少ない!紙面の都合があったのかも知れませんが、この設定と人間描写の確かさであれば、上下巻で、最後の結末ももう少しじっくり描いても立派な大作になったと感じます。
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