Sun
22
May
2011
最近古典とも言える時代のSFばかり読んでいたため、つい数年前に(日本語訳は)発売された本書は時代背景の描写も含めて目新しい新鮮さがありました。しかし何と言ってもこの本の良さはSFジャンルを超えた幼年期から続く主人公のプラトニックな恋の結末や、人物描写と心理描写の丁寧さといった文学書としても秀作と呼べる筆力ではないでしょうか。きっと日本語訳も素晴らしいのでしょう。
内容はつい先日読んだ「宇宙消失」を思い浮かべるような舞台設定で始まります。地球がすっぽりとスピンと呼ばれる膜で包まれて、時間から取り残される設定です。そんな中、地球滅亡の時代を必死に生き抜く人々と、スピンの謎に挑む主人公たちの両方の視点で丁寧に描写された時代が読み手を惹きつけます。
自分がこのSFを気に入った最大のところは、ラストの希望ある終わり方でしょうか。自分の信条で映画も小説もすべての創作ジャンルに共通して課せられた使命は「希望」を与えることだと信じているので、どんなに面白くても希望のない終わり方、自虐的なラストは論外です。その点、本書もきちんとラストは素晴らしい新世界への希望で繋がれているので、読後感も良かったです。
最近の著作でもこんな名作&大作のSFがあったのですね。続編の「AXIS」も是非読んでみようかと思います。
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