Sat

24

Feb

2018

城塞 上・中・下 全3巻完結セット (新潮文庫)

司馬遼太郎はほとんど読んだつもりでしたので、日本人会の図書館で上中下の三巻からなる中編とも言えるこの「城塞」は久方ぶりの司馬遼太郎の書籍となりました。内容は大阪冬の陣から夏の陣に至る家康と豊臣家の攻防を中心に、当時の日本の政治情勢が細かく描写されており読み応えがあります。司馬遼太郎らしく、家康と秀頼に始まり周辺の人々を含めた人物描写の中で、やはりというか大阪方の真田幸村の描写には、ある一定の感情の入り方を感じます。最後は当たり前なのですが、大阪城が落城し壊滅に至る中で、淀殿と秀頼の最後はあくまで外からの客観的な情景の描写で終わっているところが、逆に悲哀を感じるというか、残酷さを感じます。
 この時代の必然とは言え、秀頼側に生き残る道が閉ざされていた事実と、家康の感嘆というかもはや一個の人としての領域を超えている采配と政治の策略には、本書のように大阪の陣を通しで俯瞰してみると今の国際情勢のミニチュア版とでも呼べる感がします。

 こうやって家康の徳川体制確立の最後の仕上げを見ると、好き嫌いを超越した神々しさすら伝わってきます。戦国時代の書籍も久しぶりでしたが、日本にかつて歴然と存在したこの時代とそれを強固なまでに終わらせて江戸時代を確立した徳川家康という稀有な人物の存在には、改めて感慨を感じます。また山岡荘八の家康を読み直したくなりました。


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