Wed
20
Feb
2019
読むきっかけになったのは、Amazonで見かけたドラマ版の解説だったのですが、無料だったシーズン1の第一話だけ観て、後は原作を帰省休みに一気に購入してみました。各上下で三部作ですので合計6巻なのですが、実は最初の1巻だけは昨年に購入した際に読んでいました。残りを年末年始に購入して、年明けから一気に読み終えたのですが、感想としてはまずまず面白かったというところでしょうか。
吸血鬼ネタは好きなジャンルの一つで、大昔にハマったスティーブンキングの「呪われた町」(今でも吸血鬼小説はこれがベストだと思います!)に始まって、バンパイアハンターDシリーズなどなど読んできました。映画もまあ好きなジャンルで色々観ましたが(映画だとパッと思いつくのは「ヴァンヘルシング」でしょうか)、小説・映画問わずに吸血鬼の描かれ方や定義は千差万別です。そんな中でこの「ストレイン」シリーズは、冒頭はニューヨークに着陸したジャンボの乗客が全て死亡しているというショッキングな導入から始まります。乗り込むのはCDCの検査官であるイーフで、そのまま彼がシリーズの主人公となるのですが、冒頭の導入からは吸血鬼を疫病として扱う現代的な解釈のSFかと思いきや、序盤からセントキアンという吸血鬼をよく知るユダヤ人の老人がキーマンとして登場し、定番のキャラクター配置も抜かりありません。原作者はハリウッドのヒットメーカーであるギレルモ・デル・トロで、映画の脚本を読んでいるような構成でテンポよく進んでいきます。そんな感じでしたので、3部作6冊もあっという間に読むことができました(直前に読了したカズオイシグロの「充たされざる者」とは両極端とも言えるでしょうか)。
テンポよく進む展開と定番のキャラクター配役で飽きさせないものの、結論から言うと導入巻で想像していたような疫病(吸血鬼)VS現代組織CDCではなく、至って古典的な吸血鬼VS人間といったところに収斂していくシリーズです。若干、期待値があったので残念な展開ではあるのですが、随所に現代的なツール(原発のメルトダウンで、吸血鬼の長老を斃すなど)もちりばめており、まさに現代版の古典的吸血鬼といったところでしょうか。最後の武器も携帯型核爆弾ですので…ちなみに吸血鬼そのものはどちらかというとゾンビ的な描かれ方で、なかなか感情移入はできない感じです。その点、菊池秀幸のバンパイアハンターDの貴族(吸血鬼)は個性もあり、貴族ならではの美学もあってバンパイア側にも共感できた稀有な作品でしょうか。
第二部のメルトダウンの意味は読むと分かるのですが、吸血鬼を滅ぼすのに現代の発明でもある原発が使われます。ここら辺、着想は物凄い良いと思うのですが、あっけなく長老たちがメルトダウンで滅ぼされてしまうくだりは、この着想をもう少しひねって欲しかったと思う感じはします。全体として、吸血鬼を現代版に蘇えらせたという着想から来ているのが分かるため、その分、中途半端に古典的な手法に戻るところがなかなか残念な所ではあります。まあ、吸血鬼というのは中世のヨーロッパのイメージですから、そこら辺は現代版に徹するのも難しいところでしょうか。
この吸血鬼ネタ小説や映画は今後も一ジャンルとして描かれ続けるのでしょうが、作者や時代背景によっても色々ですので、興味は尽きません。そういった意味で、このストレインも現代版のハリウッド的吸血鬼と思えば、面白かったかと思います。時間があればドラマ化されたビデオも観てみたいかと思います。
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