Wed
10
Feb
2021
スティーブンキングと言えば云わずと知れたホラー小説の大家ですが、年代的には自分が大学生位の時に読んでいたのでもう20数年前の人気作家でしょうか。映画化された作品も数知れずで、ホラー小説だけではなく「スタンドバイミー」や「グリーンマイル」、「ショーシャンクの空に(原作は「刑務所のリタ・ヘイワース」)」などの映画化作品も有名で、とにかくピーク時は並ぶものが居ないまさにホラーオブキングの小説家でした。と、過去形で話すほど昔でもないかと思っていたのですが、Amazonのスティーブンキングの書籍をみると、かつての名作である「デッドゾーン」や「ファイアスターター」、「呪われた町」といった名作が中古本しかなくなってきているのをみて焦って買い集めていたところでした。新版が出ているのかも知れませんが、これだけの名作ともいえる作品群が絶版になるのは考えられませんし、ともかくもまた読みたいと思っていた作品も多かったので、昔の作品を中古で買っていた時に、最近の短編集ということで出版されている本書「わるい夢たちのバザールⅠ、Ⅱ」ということで、文庫本としては二冊構成で「マイル81」と「夏の雷鳴」という題名で計20作品の短編集が読める内容です。
正直、スティーブンキングの作品も私が好きだったのは「ミザリー」あたりまででその後の「IT」や「スタンド」は冗長過ぎるしパンチも効かなくなった来た感じで読んでいませんでした。それ以前の作品はホラー小説としても逸品ながら、単なるホラーで終わらずに最後に希望がある余韻のある終わり方が上手で、それを目当てに読んでいたような感じです。以前に読んだ短編集でも「霧(ミスト)」なども映像化された作品は二流のホラー作品と化していますが(スティーブンキングのホラー系作品の映像化作品は「シャイニング」や「デッドゾーン」が何とか見れるくらいで、あとは原作を台無しにしているものが多いように思えます)、原作は真の異世界の恐怖と希望とも絶望とも取れるラストの締め方で一流の短編ホラーとなっているのではと思っています。
前置きが長くなりましたが、そんな全盛期のスティーブンキングファンだったので、最近出た短編集ということであまり気が進まなかったものの、恐らくは既に老齢を超えていらっしゃるキングが久しぶりにまとめた短編集だということで、書籍を日本のAmazonで購入して読んでみました。
結論から言うと、全盛期のような勢いのある作品はあまりなかったものの、ホラーだけではないキングの持ち味が満遍なく楽しめるバランスの取れた短編集だと思います。もちろん、作品が執筆された時期もバラバラで、全盛期の時の作品も多々あったのも理由かと思います。それでもあらためて、20作品の短編集を一気に読ませてくれる筆力は長編こそ難しいのかも知れませんが、まだまだキングの執筆意欲があるのではと期待させる内容ばかりでした。半分近くの作品はホラーではないものでしたが、キングらしい皮肉もありつつも希望と人間愛のある作品内容には好感が持てます。ホラー作家としては全盛期のキングの作品を上回る作家はなかなか見つけられないのですが、やはりホラー作品以外にも実績のあるスティーブンキングだからこその、ホラー作品とも言えるわけでなかなかバランスを持った作家というのは難しいものなのだと思います。
未だに断片的ではあるものの20数年前に読んだ作品群は、せりふ回しまで想い出せるシーンが少なくありません。久しぶりにスティーブンキングの世界を堪能できた短編集といことで、全盛期のファンにもお勧めだと思います。私自身は、まだ読了していない長編にチャレンジしてみようかという気になりましたので、未読の長編小説を幾つか探してみようかと思います。
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