Fri
23
Apr
2021
前回の「月の光」に続いて中国のSF短編集である「折りたたみ北京」を読了しました。同じく「三体」英語訳者で自身もSF作家でもあるケン・リュウ氏が選者となっており、内容のレベルの高さはお墨付きです。全ての短編が当たり前ですが中国SF作家であり、7作家の作品13編を読むことが出来ます。もちろん!「三体」の著者である劉慈欣氏の作品も2つ収録されており、中でも「円」は「三体」に登場するバーチャルゲームのモチーフになっています。正直、どれもレベルが高くて甲乙つけ難いのですが、やはり表題作の「折りたたみ北京」と劉慈欣氏の「円」が敢えて上げるとすればお勧めでしょうか。
驚くのは作品の面白さのレベルだけではなく、7人の作家の多種多様な経歴でしょうか。「折りたたみ北京」の作者である郝景芳氏は物理学を専攻した女性の方で、ハードSFの裏付けだけではなく作中にも登場するような底辺の人々の描写などきめ細かな内容になっています。この方のもう一つの作品である「見えない惑星」も秀作で、こういった発想力がまさにSF的な強みなのかと感心させられます。
「三体」作者である劉慈欣氏の「円」は言うまでもないのですが、もう一つの作品である「神様の介護係」もちょっとユーモラスでもあり、こんな作品も描けるのかと幅の広さを改めて感じさせます。
しかし、「月の光」に続いてこれだけの作品群と作者達が揃っている中国SF界は空恐ろしいものを感じます。日本国内からもそういったSF作品、作家の方たちが出てきてほしいところです。
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