Thu

06

Feb

2025

地球最後の日 (創元SF文庫)

昨年後半からずっと自己啓発関連本やアンチエイジングの書籍ばかり読み続けていたので、少し頭の休憩として昨年夏に帰省時に古本で購入していた「地球最後の日」というSF小説を読了しました。邦訳初版は1998年とのことですが、原著である「When Worlds Collide(世界が衝突する時)」は1933年に上梓とのことなので、なんと戦前の書籍ということになります。著者のワイリー&パーマー(フィリップ・ワイリーとエドウィン・パーマーの共著とのことです)ももちろん全く存じ上げないのですが、小惑星が飛来して地球に衝突するというモチーフの古典ということで、楽しみに読ませていただきました。
 冒頭の小惑星を捉えた写真がガラス版だったり、それを携えて南アフリカからアメリカまで旅するなど現代では考えられないような情報伝達経路が描写されていて面喰いますが、戦前に発刊された書籍ということを考えれば頷けなくもありません。むしろ、それ以外の主人公格のトニーや地球脱出の私設機関?を率いるヘンドロン博士が進める計画の過程は当時の時代背景にしてはよく練られた感があり、現代の我々が読んでも充分楽しめる展開です。トニーの使用人として出てくるのが日本人というのが何とも時代なのでしょうか!?


 衝突する小惑星が衛星を伴っていて2つあり、地球に衝突するガス小惑星と入れ替わりで地球の軌道に残るであろうと思われる岩石惑星がセットで飛来するというのがミソであり、衝突する前にもう一つの岩石惑星に宇宙船で脱出するというのがストーリーの骨子になっています。その過程で一旦すれ違った際に起きる地球規模の大災厄により崩壊した秩序の中で、脱出する機関の人々と難民化した暴徒との攻防でかなりの人数が失われるなど、後世の色々な終末SFのモチーフになったような要素が一通り盛り込まれている感じがあり、読んでいると既視感がしなくもありません。そういった意味では、後世の小惑星衝突もののSF小説に影響を与えたのかと思わなくもありません。

 結末は例によって2基脱出した宇宙船のうち1基は無事に到着し、惑星も何とか居住可能というところでハッピーエンドで終わる小説ではありますが、国連も組織されていない時代の小説ということで、国家ならぬ学者の私設機関で宇宙に脱出するというところが当時の時代状況を反映していると言えなくもない印象ではあります。

 ちょうどこの小説を読んでいる最中に、タイムリーではあるのですが、下記のようなニュースが新聞にも掲載されていて少しドキドキしました。実際に衝突するのかの計算が数年経たないと分からないというのも、ちょっともどかしい感じがします。ちなみに小説の中では戦前にも関わらずほぼ衝突するコースとタイミングは相当事前に判明しているという描写がありましたので、100年近く前の小説ではありますが、予測精度や時期はあんまり進歩していない気がしなくもありません。

 大分古い時代の古典なので、ギャップがあり過ぎて楽しめるか不安でしたが、なかなか読み応えのある終末小説でしたので、機械があれば一読してもよいのではないでしょうか。

本作品の評価:3.5

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