Sun
09
Jun
2019
こちらも元々は暇つぶしで古本屋で購入した最初の「巨神計画」を読んだのが、春先だったのですが、意外な⁈面白さについKindleで続編の「巨神覚醒」まで読み進めてしまいました。そして例によってこれも3部作構成で、最後の「巨神降臨」は発売日を待ちつつ、すぐにKindleで購入して一気読みしてしまいました。全編を通しての主人公は、子供の頃に偶然にも巨神(巨大ロボ)のパーツの一部である手を発見した女性の科学者なのですが、彼女を中心としてパイロットであるカーラとヴィンセント、続編からは彼らの子供であるエヴァを中心に話が展開していきます。そして、前半を通して重要な役回りを演じているのが、前半の物語の語り手でもあるインタービュワーと呼んでいる謎の高官?です。
このシリーズの特徴的なところが、全編を通じてストーリーがいわゆるインタービュワーによる聞き取り記録や、ある時にはある人物の手紙、通信記録などで構成されていることで、これは前に読んだワールドウォーZに似ている形式とも言えます。もっとも形式については、もっと変化に富んでいるので、読者にとってはニュースや後日の記録を読みながらそれでいて臨場感一杯の構成と、話の背景まで途切れずに理解できているのは、作者の文章力と構成の秀逸さがでているところかと思います。
ストーリーは、巨神を復元したタイミングで現れる巨神を残した異星人との関わりが軸になりつつ、決して異星人VS地球みたいな安易な宇宙戦争モノになっていないところが面白さとも言えます。巨神というロボットが存在感を示しつつ、実際にこのロボット(巨神)がドンパチするのは全体の10%もないのではないでしょうか。この巨神が存在し、その存在を巡る人間模様の小説とも言えます。とどのつまり、これらのハイテクな巨神を持て余しつつ、翻弄される人類社会のシミュレーションとも言えますが、最終的に希望を持てる終わり方になっているところも作者の明るさが感じられて作品に好感が持てます。
この3部作を通してのキーマンは主人公たちもそうなのですが、前半のストーリーテーラーであるインタービュアーである謎の高官と、途中から現れるこれまたバーンズと言う名前の異星人と関わりのある(異性人の子孫?)これまた謎の存在です。これら脇役のキーマンも伏線としてはりつつきちんと物語のキーとして貴重な存在で、最終的にストーリーとして収斂しているところも構成として秀逸な感じがします。
この作者なのですが、これが処女作ということで、予想はしていましたが巻末を読むと、当初は子供に買ってあげたオモチャのロボットの背景ストーリーを膨らましていったとのことで、iPhoneで書き始めたとのことです。最近読んだ、邦書の傑作SFである「オービタルクラウド」の作者と著作とオーバーラップする感じですが、昨今の小説のデビュー方式も世界共通で変化してきているのでしょうか。このSFもネット社会が無ければ出会えなかった物かもしれないと思うと感慨深いものがあります。
ストーリー的には、純粋に巨大ロボと異星人とのファーストコンタクトの両方が楽しめるSFと言うことで是非一読してみてはどうでしょうか。是非、次回作も期待したいと思います。
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