Sat

09

Nov

2013

家族八景(新潮文庫)七瀬ふたたび(新潮文庫)エディプスの恋人 (新潮文庫)

日本のSF作品の中では、既に古典名作的ともいえる七瀬三部作を読み切りました。最初の「家族八景」を読み始めてから少し時間が空いていたのですが、次の「七瀬ふたたび 」と最終巻の「エディプスの恋人」は、昨日と今日で読んでしまいました。「家族八景」が発刊したのが私の生まれた年と同じ1972年ですから、相当古い作品とも言えるのですが、今まで読む機会がありませんでした。それでも「七瀬ふたたび 」は何度かドラマで放送していた記憶があり、タイトルは知っていたので、SF作品としては何度も映像化されている代表作というのも頷けます。

この三部作と呼ばれているのは、テレパスを持つ火田七瀬という主人公でESPをテーマにした作品というところが共通ではあるのですが、各作品の趣や構成は随分異なっています。それでも「エディプスの恋人」以外は何度も映像化され続けてきており、特に「七瀬ふたたび 」は超能力ものの典型とも言え、時代を超えて何度も映画化をされているのも分かるエンターテイメントの要素が揃っています。

最終的に主人公が生き延びれないという読者としては寂しい結末ではあるのですが、趣の異なる三作を通して悲壮感はあまりなく、テレパスの主人公である七瀬の目を通した社会や世界観の描写に感情移入させられます。最終作の「エディプスの恋人」では、宇宙意思という壮大なSFテーマにまで七瀬の目を通じて表現しており、同じ主人公で3つの作品が楽しめるオムニバス的な構成でもあります。それでもやはり超能力ものとしては「七瀬ふたたび 」が王道で、主人公以下が全て抹殺されてしまう結末はさておき、色々なエスパーとの邂逅や謎の抹殺集団との闘いといったエンターテイメント溢れる作品でしょうか。

これだけの有名な日本SF作品でしたが、今まで読む機会がなかったのが不思議なくらいでした。期待通りの面白さではありましたが、たったの三作で終わってしまっているところが寂しくもあり、だから名作として残ったのかもしれませんね。それでもこれだけ魅力ある主人公であるわけですから、読者としてはもう少し活躍する作品をみたところです。エスパーものでこれだけ面白かったのは、スティーブンキングのファイヤースターター以来でした。機会があれば映像化された作品も観てみたいと思います。


この記事をシェアする

ディスカッション

コメントはまだありません

コメントはお気軽にどうぞ

※メールアドレスは公開されませんのでご安心ください。


This site is protected by reCAPTCHA and the GooglePrivacy Policy and Terms of Service apply.

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

”ところによりエンジニア”